一年前まではそこはただのぼろ家だった。だけど、去年のちょうどいまごろ、怪しい…… もとい見知らぬ男がふらふらとあらわれてそこに居ついてしまってから、その家のすべては180゜変わっていったのだ。
 何がいちばん変わったかといったら、その外観。腐れた木材剥き出しの壁はきれいな空色に塗られ、 見事なまでの風穴があいていた屋根は真っ白く塗られて、そして玄関口のど真ん中についた立派な扉の上に、一枚の看板がかかった。

『ソライロスイッチ』
と、でかでかと描かれた看板が。

 ようするにお店になったんだ、ソライロ屋というわけのわからないお店に。ソライロ屋と言われてもなんなんだかさっぱりわからないし、 それ以前にその店の唯一の客は唯一のアルバイトに変わってしまった。けれどその唯一のアルバイトの努力のおかげで最近少しづつ店の入口をくぐる人が増え始めた。 それでもふらふらとやってきていつのまにやら居つき、ぼろ家を立派なお店に変えたあの男の毎日は変わらない。

 これからのお話は、唯一にして働き者のアルバイトにほんとの青空を見せてくれたひとが
一度なくしたほんとの青空をとりもどすお話。